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計画と結果報告

年度別計画と結果報告

この能力養成プログラムは,国際的に最先端のフィールドで活躍出来る高度な研究能力の強化を目指したものです。具体的な実施施策は,次の5点でした。

研究方法論の社会学的基礎の強化

前期課程の1年次に提供される研究方法論科目について,社会哲学的な基礎を提供するため定性的方法論の編成を改革しました。平成21年度では,前期課程の1年生を対象に実証主義,構造主義,解釈主義などの社会哲学的な基礎およびアクションリサーチなどの研究方法を教授する科目として提供されています(図表1)。

図表1 定性的方法論研究 平成21年度 各回の講義テーマ

講義科目のシームレス化

科目体系を院生にわかりやすく伝達するために,古典の理解及び領域の全体像の理解を目的とした基礎理論科目である「特論(第1群)」,数学的・統計的・定性的な各研究方法の基礎を理解するために提供される「方法論(第2群)」,先端的な研究についての方法と知識を修得するための「特殊研究(第3群)」の科目間の連携を図示するようにし(平成19年度以降),平成20年度以降はその実質化に取り組みました。結果として,応用科目である「特殊研究」の科目数および履修者数の増加がみられました(図表2)。在籍者数が100人前後と変わらない中で,特殊研究科目の履修者が顕著な伸びを見せたのは,講義科目のシームレス化の一つの成果であるとみられます。

図表2 特殊研究の開講数と総履修者数

論文作成力養成セミナーシリーズ

論文作成の一助とするため,多様なリサーチセミナーを企画し段階的な研究力の促進を支援しました。リサーチセミナーには,平成19年に開始された「論文作成セミナー」,平成20年に開始された「六甲台セオリーセミナー」,その他学外の先端的な研究者を招聘した「オープンセミナー」を各年次に,それぞれ開催しました。

論文作成セミナーは,平成19年の開始以降,参加者の意見も含めて改善を実施してきました。初回の平成19年は,国内で活躍する研究者を,研究方法ごとに招聘して論文作成の支援を行いました(図表3)。

図表3 平成19年度論文作成セミナーの招聘者と講義内容

平成20年度は,学内から研究者を選抜し,それぞれが持つ進行中の研究報告を基本として実施しました。また,平成20年度より,論文作成セミナーは院生に対して単位を与える公式の科目「方法論特殊研究(論文作成セミナー)」として前期に開講するようにしました(図表4)。

図表4 平成20年度論文作成セミナーの招聘者と講義内容

平成21年度も,前期に「方法論特殊研究(論文作成セミナー)」を実施しましたが,これまでのセミナーから次のような改善をしました。それは,講演者自身の研究をもとに方法論の議論を行うのではなく,参加している院生の研究をもとに方法論の議論を行うスタイルへの変更でした。内容は,データ分析の指導を行うことに特化し,院生には当該院生の指導教員ではない2名の教員を担当者として配置しました。そのうち1人は統計学の専門家,もう1人はその分野やデータ特性に応じた実証研究の専門家です。講義において,教員と院生が所有したデータ,分析手法,さらには担当した教員の一覧は図表5の通りです。

図表5 平成21年度論文作成セミナーの招聘者と講義内容

また,個別の論文に用いられる方法論ではなく,それらの基礎となる理論についてのセミナーも平成20年度より開催しました。単なる研究報告だけではなく,研究の着想から完成への経緯についても論文執筆者に解説をしてもらうことにより,院生がより効率的に論文作成を行えるようになることを意図しました。なお,このセミナーは「六甲台セオリーセミナー」と呼称されています。

平成20年度のセミナーの概要は,図表6の通りです。セミナーだけでなく,最新の手法については,セミナー前に特別講義を設けて大学院生に配慮しました。平成21年度のセミナーの概要は,図表7の通りです。

論文作成セミナーや六甲台セオリーセミナー以外にも,各分野の先端的研究者を適宜招聘するなどして,院生の論文作成能力を高める取り組みを実施しました。

平成19年度は,大連工業大学管理学院の王傑教授を招いて企業関連報告制度の構築における実務家教育についてのセミナーを,また,シンガポール国立大学人文社会科学部のAnthony Chin准教授を招き海外ジャーナルの執筆構想から論文掲載までについてのセミナーをそれぞれ開催しました。

平成20年度は,NUSビジネススクール准教授の山田健准教授を招いて研究内容(“Differences in investor preference, liquidity provision and performance”)および海外ジャーナルへの投稿に関するセミナーを開催しました。さらには,講義科目として,「国際マーケティング方法論特殊講義」を開催し,テンプル大学の小田部先生による海外ジャーナルを意識した論文作成についての講義を実施しました。

さらに,平成20年度には,「大学院生のための研究力・キャリア強化セミナー」を開催しました。これは,若手研究者の研究支援およびキャリア支援のために開催されたセミナーです。本学院生で日本学術振興会の新井康平特別研究員および山崎喜代宏特別研究員による「日本学術振興会特別研究員になるということ」,慶應義塾大学の吉田栄介准教授による「日本学術振興会特別研究員を経験して」,研究科長(当時)である加登豊から「研究職につくために」,大阪経済大学の太田一樹教授,近畿大学の廣田教授,そして本学の栗木契准教授による「研究者キャリアの第一歩を踏み出すために:ジョブマーケットの実際」といった講演が行われました。参加者61名中,経営学研究科の院生は41名であり,後は本学経済学研究科院生(2名),本学法学研究科院生(4名),本学国際協力研究科院生(3名),本学国際文化学研究科院生(1名),近畿大学商学研究科(1名),慶應義塾大学商学研究科(3名),横浜国立大学大学院国際社会科学研究科(1名)和歌山大学経済学研究科(1名),早稲田大学商学研究科(2名), その他学部生(2名)という参加状況でした。

平成21年度は,国際学会での発表を支援するため,“Inter Cultural Communication Seminar”を開催しました。本学の特別研究員であるElena Groznayaを講師として,週2回7週間にわたり国際学会での英語コミュニケーション能力を育成するための講義を実施しました。

図表6 平成20年度六甲台セオリーセミナーの招聘者と講義内容

図表7 平成21年度六甲台セオリーセミナーの招聘者と講義内容

集団による博士論文指導

博士論文に向けた初期成果を確認する「第二論文」を提出し合格した院生には,論文指導委員会を組織し,集団指導による博士論文の指導体制を確立して研究能力の養成を行いました。各年度における集団指導体制の概要は図表8の通りです。

図表8 論文指導委員会による集団指導体制の実施状況

個別プロジェクトの実施

上記施策に加え,個々の院生の研究テーマについて高度な研究を推進できるよう個別プロジェクトを実施しました。この目的は,個々の院生の研究テーマを推進させることで,学会発表や論文に結びつけること,そして,文部科学省科学研究費の申請方法に準じたプロポーザル方式をとることによって(院生単独プロジェクト),研究の成果志向と計画性を高めることにありました。具体的には,院生が単独で行う研究,院生が経営学研究科の教員と行う共同研究,ならびに院生が経営学研究科教員および経営学研究科を修了した研究者の3者で行う共同研究の3つのカテゴリーで,それぞれ研究計画書を提出し,その研究計画を審査して研究支援を行いました。採用された研究の一覧は,図表9の通りです。

図表9 研究力養成に関連したプロジェクト一覧


能力養成プログラムは,学部生から実務家まで多様なバックグラウンドを持つ人々への教育が可能な多角的教育能力の高い研究者の養成を目指したものです。

TA業務の拡充とLFの導入

具体的な実施施策は次の三段階を考えました。第一段階として,前期課程の2年目に学部講義のTAとして授業の補助業務を行い,第二段階としては,ラーニング・ファシリテーター(LF)として学部及び前期課程の講義の質疑応答を担当したり,クラス討論の指導を行ったりすることによって教育能力を高め,第三段階では,実務家向けの教育能力を養成するために,MBA演習・講義などの教育機会を設けました。

TA(Teaching Assistant)は,教員が行う教育を補助する仕事です。TAを担当することで,授業設計,教員の授業の進め方,教育方法について実地に学ぶことができます。例えば,受講者が取り組む自習課題について,学生が提出した課題を読み,教員が作成した正解例に照らして評価し,コメント等を書いて返却する仕事は,TAの仕事の典型例です。その仕事を通じて,受講生の達成度を評価する適切な方法を知るとともに,課題における受講生のつまずきを直に見ることで,受講生の授業理解度を高めるためにどのような課題設計が有効かを学ぶことができます。

LF(Learning Facilitator)は,それを担当する博士課程院生自身が,補助的教育を行う仕事です。自ら実際に学生を教えることによって,教育の実習を行います。例えば,経営学研究科の授業で行う「アフターセッション」は,LFの仕事の典型ですが,「アフターセッション」には,様々な目的と形式があります。例えば,受講学生が提出した課題レポートを読み,教員が作成した正解例に照らして評価し,コメント等を書いて返却する仕事はTAの仕事であるのに対し,返却した課題レポートを受け取った受講学生に対し,授業で課された課題の正解例を解説する課外授業はLFの仕事の典型例です。課題の解説は,教員の授業に対して補助的ではあるものの,それ自体1つの授業となります。LFは,授業担当教員と同じレベルで課題の内容,課題の正解例,課題の教育意図を理解した上で,自ら授業を行い,出席学生からの質問にもその場で答えなければならず,その仕事を通じて,学生を教育することを実習することができます。

図表10は,これまで過去5年間のTA(LFを含む)の人数です。本プログラムは平成19年度より開始されましたが,それまでのTA数に比べて,総数が増加しています。さらには,多角的な教育能力の養成,という状況を反映して,学部TAだけではなく,大学院の社会人コースや一般院生向けの講義および演習のTAも増加しています。なお,学部TA数が21年度に減少したのは,講義資料のWEB上での配布システムが当該年度より本格的に整備・運用されはじめたため,業務量が減少したことによるものと考えられます。

図表10 TAの人数の変化

図表11 TAおよびLFの採用者数

教材作成支援

本プログラムでは,教員が院生,若手研究者と共同で教材・講義用の事例などを開発する取り組みを行いました。この目的は,効果的な教材を開発することはもちろん,教材開発のプロセスに院生や若手研究者を巻き込むことによって,「教える」,「伝える」という視点を醸成することにあります。のべ10のプロジェクトが計画書の審査を経て採用されました。それぞれのプロジェクトの項目は図表12の通りです。

図表12 教育力養成に関連した経済的支援一覧


経営実践能力を持つ研究者を養成するプログラムでは,アクションリサーチの能力を育成する為の3つの取り組みを行いました。

セミナーの開催

アクションリサーチは,経営学分野ではまだ十分に浸透しているとはいえない研究手法で,研究者も限られています。そこで,まずワークショップを開催し,理解と検討を深めました。アクションリサーチの先行研究分野である,社会心理学でわが国を代表する研究者である京都大学大学院の杉万教授と熊本大学の八ツ塚准教授を招き,「アクション・リサーチ・ワークショップ」を平成21年1月23日に開催しました。

そして,平成22年1月19日には,神戸大学出光佐三記念六甲台講堂において,『アクションリサーチセミナー』を開催しました。このセミナーでは,京都産業大学マネジメント研究科の具承桓准教授による「アクションリサーチにおけるリサーチメモの作成方法」,早稲田大学商学学術院の伊藤嘉博教授による「アクションリサーチ実施上の課題」,本研究科の松尾貴巳准教授による「アクションリサーチにおけるリサーチサイトとの関係構築について」,の3つの報告がなされ,アクションリサーチの効果や学生が取り組む上での注意点などが活発に議論されました。

また,環境会計関連のアクションリサーチを行うための基礎となる情報システムの理解を深めるために「アクションリサーチのためのマテリアルフローコスト会計導入ソフト使用方法に関するセミナー」を,日本能率協会コンサルティングの下垣彰氏を招聘して実施しました。

定性的方法論へのアクションリサーチの導入

「アクション・リサーチ・ワークショップ」やその他のセミナーの議論にもとづいて,経営学分野でのアクションリサーチ手法のリーダーシップをとれる研究者を養成する仕組みとして,「定性的方法論研究」にアクションリサーチの講義を加えました。

教員と院生の共同アクションリサーチプロジェクトの支援

また,このようなアクションリサーチを実際に教員と院生が共同して行うプロジェクトを実施しました。次の2つのプロジェクトが採択,実施されています。

1つ目のプロジェクトは,本学の國部克彦教授を中心として実施された一連のマテリアルフローコスト会計の導入プロジェクトです。篠原阿紀氏・岡田斎氏・北田皓嗣氏・天王寺谷達将氏の4名の大学院生との共同研究という形をとり実施しました。2つ目のプロジェクトは,本学の金井壽宏教授と大学院生の伊達洋駆氏の共同で実施した,人的資源開発の仕組み開発です。
学会報告者数

学会報告者数がどのように変遷してきたのかは,次の図表13の通りです。プログラム実施2年目に当たる平成20年度に大幅に報告数が増加しました。また,平成19年度までは毎年10人未満だった海外学会の報告者数は,平成20年度には全報告の81人中27人となっており,国際的な活躍を志向する院生が増加しました。

図表13 大学院生の学会発表者数

査読付き論文発表数

査読付き論文数がどのように変遷してきたのかは,図表14の通りです。総論文数の著しい増加は見られませんが,査読付き論文数の割合が増加しました。

図表14 大学院生の発表論文数

博士学位取得者の進路

図表15は,博士学位取得者のその後の進路の内訳を示したものです。平成20年度は大学教員の割合が増加しています。

図表15 大学院生の就職の内訳


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神戸大学大学院経営学研究科
神戸大学サイト
大学院教育改革支援プログラム 日本学術振興会